僕は世界の終わりを望んでいた。望むのは簡単で,実行するのはもっと簡単だ。だから,そこに,至るまでの姿は,美意識を刻むにふさわしいものでなくてはならない。大切なのは,その過程。その結果までの哲学だ。
「ハイブリス」と呼ばれるワームは,今のところ比較的無害だが,暗号化されたプラグインをダウンロードし,自身をアップデートすることができる。それにより危険なものに変貌する可能性がある。プラグインはRSA 128ビットで暗号化されており,今までのウイルスのコードよりもっとも複雑で洗練されている。
被害形式をプラグインで撹乱していく,と云うことも可能だ。各ウイルスメーカーが,このウイルスに感染すると「こういう」被害があると解説しようにも,「こういう」が変化し,その「こういう」は,果てることなく変化させられる。そして,感染方法も,いかようにも変化させることができる。今はスパム的にニュースグループへの自己プラグインを投稿するのが被害となっているが,下手なプラグインがアップロードされたら,致命的な被害と,爆発的な拡散方法を,ウイルス自らが入手し,実行することになる。
自らを進化させるウイルスというのは,すでにいくつか存在するが(過去記事),進化の選択肢が(プラグインが作り出されるかぎり)無限というのは,興味深い。「社交術」があまりないと記事(ZDNet Newsの記事)ではあげられているが,なら拡散方法をアドオンすればよい。すべての送信メールに添付するとか,表示したウェブサイトに書かれているmailtoアドレスを保持し,そのメールアドレスに一斉送信とか。足りないものを補う,というのは簡単な進化の形だ。終わりの姿にたどり着くにしても,その過程はいくつもある。BIOS,またはOSの低層部分にアクセスするプラグイン,ファイルをしらみつぶしに破壊していくプラグイン,アンチウイルスソフトの動作にループをかけるプラグイン(薬はいつも毒になりえる)。…進化の果てはひとつじゃない。世界の終わりを望むにしても,その道筋はいくつもある。そして,終わりの姿も,ひとつじゃないから,進化の形を無限に持つウイルスは,ステキだ。
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